作品紹介シュヴァリエ

第9回 プロップデザイン toi8の言葉ありき!「質感」

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名前
toi8(といはち)
経歴
アニメーション専門学校を経てスタジオ4℃入社。その後、イラストレーターとして活躍。数々のライトノベルや、雑誌上でイラストを発表している。設定としてアニメーションに関わるのは初の試み。雑誌「New Type」12月号よりイラスト連載開始。ペンネームは誕生日が10月8日であることに起因しているという。奥様はキャラクターデザインの尾崎智美さん。

——最初に、『シュヴァリエ』の企画の話を聞いていかがでしたか?

 デオンという実在の人物が女装してスパイ活動をしていたと聞いただけでも面白いと思いましたし、さらに資料で『女装の剣士シュヴァリエ・デオンの生涯』(窪田般弥/著)を読んで、これは面白い生き方だな、と思いましたね。

——18世紀のヨーロッパが舞台ということで、描く時にご苦労はありませんでしたか?

 テレビゲームではRPGの中でキャラクターが変な甲冑をつけていたりと、中世ヨーロッパの亜種で満ち溢れていますし、『ベルセルク』などのヨーロッパの世界観を扱った作品に触れてきたので抵抗なく入り込めましたね。普段絵を描く時だったら想像に近い形で描いていくんですが、世界観が18世紀のフランスからかけ離れたものではなかったので、資料等を探すのが大変だろうな、という感じですね。

——具体的にどのように資料を探されていたんですか?

 今回は本や、ネットで画像を探しています。海外・英語圏のサイトでは、こういった古いものまで詳しく調べることができますからね。他に参考になったのは映画『華咲ける騎士道』、『マリー・アントワネットの首飾り』などです。『マリー・アントワネットの首飾り』はもう少し後の時代ですが、建物は基本的に石造りなので、時代が変わっても、そこまで変わりはありませんでした。

——実際に映像になった作品を観ていかがですか?

 美術がキレイですね。ノートルダム寺院のイメージボードや、3Dシーンでのテクスチャーなど、タッチの付けかた、色のつけ方、どれをとっても巧い方だと感じました。映画『魔女の宅急便』で美術監督をされていた大野広司さんだと知って納得しました。『シュヴァリエ』はハイビジョン放送なので、美術の細部までさらに美しく見えますね。

——どのデザインが一番気に入っていますか?

 ロビンの銃です。フリントロック式という点火方式の銃なのですが、どのように火がついて弾がでるかが全然わからなかったので、自分で色々調べながら、面白く描けました。

——『シュヴァリエ』の設定を描くことで、新しい発見はありましたか?

 イラストレーターとして一枚絵の仕事が多く、後の人に渡して、その後自分で手出しできないという作業を今までしばらくしていなかったので、アニメーターの時には描けていた“まとまった線”を描けなくなっていたのがショックでした。実際に線をクリンナップしながら描いてくださる原画さんがいるからこそ、設定ができていると思っています。

 尾崎にも指摘されたのですが、銃の一つをとっても、質感を柔らかく描いてしまって、どこまでが木か、どこまでが金属かがわからない。集団での作業では、後の作業の人にわかりずらい線を描くと、人によってはどんなラインにも捉えられてしまうので、意図した通りものが上がってこないんですね。もうちょっと考えて描けばよかったと反省しました。

——最後に、『シュヴァリエ』を楽しみに見てくださっている方々に一言お願いします。

 現在放映されているアニメーションにはなかなかない、魅力あるキャラクターと世界観を持ったアニメーションです。ですが、決して安易に流行に逆らったものではありません。是非楽しみに見て欲しいと思います。

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【ロビン銃】ここの機構はどのように動き、火がついて、火蓋が上がって、火花が中に入って弾が出るのかを調べながら描きました。ホルスターに収めた時に銃が下を向いてしまうので、口径と弾のサイズによっては中の火薬が落ちるのではないかと心配だったのですが、大丈夫でした。

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【デオン剣】主人公が使用する剣は、後で十字架が溶接される設定だったので、極力、飾りを無くし、羽根の飾りだけにしています。

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【テラゴリー剣】テラゴリーの剣は、カップの部分が少しキズついていたりして、古兵(つわもの)のイメージです。

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【デュラン剣】デュランの剣は洒落者で、派手な感じに。

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【フォントデザイン】18世紀当時は小文字と大文字の区別もなかったので、両方が同居するようなデザインです。