インタビュー CASE:磯部 真彩

「自由」がある代わりに、「自己責任」が求められる

名前:磯部 真彩
所属:制作3部
入社年:2007年
役職:プロデューサー

※このインタビューは2024年12月時点の内容となっています。

質問1)学生時代はどんなことをしていましたか?

アニメ業界に入ると決めたのは中学3年生の終わりぐらいだったんですけど、それまでもそれからも、特別何かをしていたわけではなかったですね。絵はずっと好きだったので、趣味としてイラストを描いたり、マンガを描いたりはしていましたけど。小さい頃から普通にアニメを観て、マンガを読んで、小説を読んで、ゲームをして、オタクっぽい日常を送っていました。あとは高校時代に演劇部の幽霊部員? みたいな感じで、入部希望は出さずにお手伝いで3年間ずっと裏方をやったりとか。最後まで入部はせずに、毎年大会が近づいてくると音響とか脇役とか、いろんなことを手伝っていたんです。今振り返っても、自分でもなぜそんなことをしていたのか不思議ですね(笑)。

実は最初は、作画(アニメーター)志望だったんです。ただ、深く業界研究をしていたわけでは無かったので、美術部に入るとかくらいしか絵の勉強はしていません。はやく業界に入りたいという気持ちもあり、最初から専門学校への進学を目指していたので、習ったのは本当に基礎的なことです。

アニメーション業界に入ることを意識して何かをしたのは、高校を卒業して専門学校に入ってからですね。

質問2)Production I.Gへ入社を決めた理由は?

アニメは好きでしたけど、「ここの制作会社はこういう会社で……」みたいな知識はほぼなかったので、Production I.Gをはじめ、いわゆる有名なところくらいしか、アニメの会社を知らなかったんです。

今の自分からすると、大変失礼な話で恐縮なのですが……。そうしたいくつかの会社の中で、たまたまご縁があったのがProduction I.Gだったというのが、正直なところです。

質問3)Production I.Gはひとことで言うとどんな会社でしょうか?またその理由は?

「自由と責任」でしょうか。

「自由」がある代わりに、「自己責任」が求められる会社だとおもいます。やりたいと思ったことは、多分やらせてもらえます。でもそのためには、まずやりたいこと、なりたいもの、自分にできることをしっかりと自己発信しなければならない。そして発信したからには、最後の責任は自分でとらなければいけない。

自分から言い出さなければ、いつまでたっても新しい仕事はもらえない。黙っていても階段を登らせてくれるような会社ではないと私は感じています。

一応フォローしておくと、放任主義ではないので協力や手助けはしてもらえます。

質問4)今はどんなお仕事をされていますか? 作品名と作品の中での業務担当をお教えください。

今は主にプロデューサー業務を担当していて、未発表の作品のいくつかに関わっています。

プロデューサーは人によってやりたいこと、やれる範囲が違ったりしますが、要するに作品にとっての「何でも屋さん」。作品全体の予算とスケジュールの管理をしながら、作品をどういう方向性で作っていくか、どこにお金を使って、どんなスタッフを入れて作品のクオリティをコントロールしていくかを、監督と二人三脚で考えていく仕事です。そうした一つひとつの計算が上手くハマっていい作品ができあがったときに、ものすごくやりがいを感じる役職です。

質問5)休日の過ごし方を教えてください。

配信で映像をずっと観ていることが多いですね。アニメを観たり、映画を観たり、ドラマを観たり。割合としては実写が多いですかね。料理も好きなので、自炊をすることもありますし、ゲームをやったりもします。ゲームはRPGやアクション系がメインで好きです。

外に出かけるときは、舞台を観に行くことが多いです。散歩も割としますね。

これだけ!というよりは、あれもこれも色々です。

質問6)入社してから今までで一番印象に残っている仕事は? その理由は?

『黒子のバスケ』です。1期ではオープニングとエンディングの制作進行をやって、同時に設定制作もやって、さらに制作デスクもやっていたので、とにかくめちゃくちゃ忙しかったんです。そのあと、各話の制作進行も受け持ちましたし、3期からはプロデューサーもやらせてもらった。劇場版の作業が終わるまでに、『黒子のバスケ』というタイトルを通じて、制作進行からキャリアをスタートした人間が仕事人生の中で味わえる経験を、一通り全部させてもらえた。さらにいえば、入社時の目標だった「プロデューサーになる」という夢を叶えてもらった作品でもあって、とにかく印象が強いです。

Ⓒ藤巻忠俊/集英社・黒子のバスケ製作委員会

質問7)今の自分の役職を目指すなら、どんな資格や経験を有しているといいと思いますか?

プロデューサーの仕事をする上で、無駄な経験はひとつもないと思います。いろいろな立場の人と接する仕事なので、いろいろな経験をしておくと、相手の立場を想像する上で役立つでしょうから。そうした前提の上であえていうなら、一度創作の経験はしておくといい気がします。マンガでも小説でも、なんでもいいんですけど。それを誰かに見てもらって、感想をもらっているとなおいいですね。絵を描く大変さは、自分でも手を動かしてみないと想像しづらい。作ったものに対してお礼を言われたときの気持ちも、何かを作らないとわからない。制作部の仕事っておそらく、クリエイティブな仕事ではないと感じている人が多いと思うんです。でも、アニメの制作中に起こる悲喜こもごもを全部見る仕事であって、それに対応するのは、実はクリエイティブなんですよね。

質問8)自分が面接官なら、どんなポイントを見ますか?

普通に人と話せるか、電話は得意か、グループワークができそうか……などですかね。電話が苦手な人が多いんですよね、実は。

あとは明確な目標を持てているといいですね。それがあると、仕事へのモチベーションを保ち続けられますから。

質問9)現在就活をしている方へメッセージをお願いします。

こうした趣旨のインタビューの答えとしてはなんですが(笑)、「年齢が上だから」とか「役職があるから」とか、そういった理由で偉い人たちの言うことをそのまま真に受けず、ちゃんと自分で判断して進んでいってください。どんなに偉い人だって間違えることはあります。そうでなくても、時代とともに正解は変わるものです。就活はもちろん、そうでない場面でも、何が正しいのか、常にちゃんと自分で判断して生きていってください。