「統合通貨 ¥€$ Monetary Union ¥€$」

台頭する第三世界の脅威を無視することができなくなった欧米諸国は、アジア域への進出の足がかりを見いだすために、日本を仲介役に立てつつ、大胆な通貨統合を実施することで新たな経済圏の覇権掌握をもくろんだ。それぞれの通貨単位である円、ユーロ、ドルの頭文字をもじった\€$の旗頭の下、権威を消失しつつあった資本主義経済に対する大文字の肯定“YES”を含意しつつ、かつての先進国家の威厳回復を賭した巨大な経済圏の確立を目指したのである。むろん、そのネーミングは、自身の立場を積極的に肯定せねばならないほど進行した大国の自信喪失を如実に反映した結果でもあったと言えよう。

対して中国、韓国、インドを主導としたアジア諸国も大規模な通貨統合を敢行。エーシアを発行してこれに対抗した。アジア各域をつなぐ経済市場への潜在的需要があったのか、あるいは、アジアの国でありながら欧米と組んだ日本への反発が逆に結束を固めたのか、エーシアは一躍、強力な通貨へと成長を遂げる。

一方、経済構造の世界的変革をもたらすはずであった\€$は、日欧米の足並みが一向に揃わないことで、統合通貨としての信頼が確立しないままに、有名無実化してしまう。結果として、無効化したかったアジア圏の力をますます増強させただけという皮肉な結果に終わってしまった。

結局、円、ユーロ、ドルはその後もそれぞれ個別に使用され続け、いまや\€$は、日欧米のアジアに対する経済的敗北の象徴として、さしたる需要もないまま、一部政治家の利権とメンツを守るためだけに市場内を細々と流通し続けているのみであった。