作品紹介イノセンス

2004年3月1日(月)

今日は大分にて宣伝活動。
電話で話した限りでは、ひところよりは元気そうですね。
痛風が再発しない程度に、おいしいもの、食べてますか?

2004年3月2日(火)

名古屋に移動。巡業は続く。

明日はサントラの発売日ですが、こちらの宣伝もお忘れなく。
予算を顧みずにカントクの要求以上の音楽を作ってくれた川井氏に報いるために、1枚でも多くのサントラが売れるよう勤めるのは、義務というよりは責務ですよ。

2004年3月3日(水)

夢を見ました。
沢山の報道陣に、取材に協力していないと責められる夢です。
カントクは熱海で犬と戯れていて、責められているのは僕一人でした。
休暇は僕にも必要なんだと思います。

2004年3月4日(木)

現場はすでに散り散りとなり、それぞれが次の作品に突入しています。
兵どもが夢の跡。

カンガイに耽ってる場合じゃねぇぞ!
次は次で、またタイヘンなのです。

2004年3月5日(金)

ひとしきり取材を終えた後、カントクは行きつけの雀荘に。
「今日は徹マンだ!」って……そんなときばっか元気ですね。
明日の初日舞台挨拶はダイジャビなのかしらん?

いろいろと弊害がありそうなので詳しくは書けませんが……2卓8人の業界人、メンツ濃すぎ……。
最後に参加した声優の大塚明夫氏は、「舞台挨拶前夜の撤マンなんてとんでもない。ちゃんと帰りますよ」と言っておられました。
フツーそうですよね。

2004年3月6日(土)

公開初日。
とうとうと言うか、いよいよと言うべきか、とにもかくにも上映開始です。
果たしていかが相成りますやら。

舞台挨拶は見にいけませんでしたが、各種メディアでの露出も増え、注目されていることは確かです。
願わくば興行の成功につながりますように。

もうしばらくの間カントクの宣伝活動は続きますが、このコーナーは今日で終わります。
ご愛読ありがとうございました。

イノセンス 公開初日
(日比谷映画にて)

あとがき

過去にI.Gで制作した押井カントクの3本の映画。そのすべてになんらかの形で関わってきたが、今回ほどカントクと共に行動したことはかつてない。
これは、今までの基本的なカントクの制作スタイルとは若干異なる進め方にならざるを得なかったという現場的な結果論によるところもあるのだが、現場に居ながら現場とは違うスタンスで作品に関わる人間が必要だったから、というのが主な理由である。
自分で書いていてもなんのことやら解り難いので平たく言うと、今回のようにデカイ規模の作品になると、現場で吸収しきれないメンドクサイことも増えるので、そのための要員をカントクのそばに置いておく必要があった、ということです。
今回の連載の中で、度々カントクの我侭に振り回され、翻弄される自分を登場させましたが、これは映画を制作して行く上で必要な葛藤を、役割分担に沿ってやっていただけのこと。
そも大きな矛盾を抱えた業界社会の中で、作品をより良く成立させるためにはなくてはならない部署です。客観的に見れば、なんとも割に合わない中間管理職的セクションではありますが、結果として残せたものでしか、それが本当に価値のある行為だったのかを量る術はありません。
世間的な評価はこれからですが、自分としては今までの作品がそうであったように、いや、今回はそれ以上に充実した制作期間を過ごせたと思っています。
大した文章ではありませんが、制作中の長期連載は、それなりにつらい作業でした。
通り一遍で見ても十二分に楽しめる映画になったとは思いますが、この連載を読んだ人だけに見える、ほんの少し違った角度から見た「イノセンス」。
そんな見方をしていただける材料になれば幸いです。

2004年3月8日(月)ラインプロデューサー 三本隆二

追伸:おかげで押井守と云う映画監督への理解は以前より深まりましたが、それもカントクに言わせれば、理解したいという願望に基づくものでしかないのでしょう。
でもね、本当に理解できたかどうかより、理解したいと思う気持ちが大切なんだと思いますよ。個人的にですが。