イラスト:海谷敏久

ミリアナ「あの子、脳震盪起こしそうな勢いで首振ってるわね」
休息室の隅では、ミリアナとニックが一連の成り行きを静観していた。
ニック「止めなくていいのか」

ミリアナ「ふん、あれくらいで倒れないわよ」
紅茶の表面を白い靄のように漂うシナモンの香りを楽しみながら、無関心そうに言う。背後を通り過ぎていく、靴底を床に叩きつけるような猛々しい足音にも、目もくれない。

足音の主を興味なさげに見送り、ニックが口を開く。
ニック「倒れたぞ」
その言葉に驚き、一瞬立ちあがりかけたミリアナだったが、床に転がっているのが

スティーブだとわかった瞬間、何事もなかったように座りなおす。
ミリアナ「そのうち勝手に気づくわよ」
ニック「そうか」

ミリアナ「ええ」
軽傷患者を目の前にして動こうとしない医者を見つめ、ニックは静かに立ちあがり、白目をむいて床に転がるスティーブに喝を入れに歩いて行った。

ニック「喝ッ!!!!」