イラスト:桑名郁朗

スティーブ「見ろよミリアナ!!!UMAチュカブラスの骨発見だってよ!!!」

Weekly UMA最新号を食い入るように見ていたスティーブが、そばを通りかかったミリアナの手に雑誌を押し付けて言ったが、ミリアナは雑誌には目もくれずに冷たい声で答えた。

ミリアナ「またニックの部屋から勝手に持ち出したわね。見つかったら今度こそ絞められるわよ」
スティーブ「大丈夫、 大丈夫、ちゃんと断ったって」

ミリアナの言葉を適当に聞き流したスティーブの様子からすると、Weekly UMA最新号はニックの部屋から勝手に持ち出された物である確率が高そうだった。

スティーブ「UMA、夢のある生き物だと思わないか?夢。いいよなぁ。俺が大切にしてる2つの言葉のうちの1つだよ」
ミリアナ「へぇ。もう1つはなんなの?」

どうせロクな言葉じゃないと思いつつも、社交辞令で聞いてみる。

スティーブ「愛!!!」
ミリアナ「フン」

スティーブのリキの入ったセリフにあきれ返ったミリアナが、もう部屋を出ようかしらと思ったころ、会話を耳にしたティムがうれしそうにトコトコやって来て言った。

ティム「私の実家にチュパカブラスが出たことあるんですよ!!!」
スティーブ「へぇー」

スティーブは信じていない。

ミリアナ「……」

一方ミリアナは、今度こそ黙り込んで静かに部屋を出ようとしたが、 ティムが頬をぷぅっと膨らませたことに気づき、退室したい自分を抑えた。

ティム「信じてませんね」
ミリアナ「いつどこで見たのかを理路整然と話していただけたら、信じられるかもしれないわね」

仕方なく口を開いたミリアナの言葉を聞いたティム、我が意を得たりとばかりにニヤリと笑い、スティーブがだらしなく寝そべるソファの端に座った。

ティム「簡潔に言うと、昔、実家の牧場で馬が襲われたときに、現場に長い牙を持った見たこと無い生物がいたんです。追おうとしたんですけど見失っちゃいました。でもそのときパパが撮った映像がニュースで紹介されて、全米で話題になったんです。ホントですよ?」
スティーブ「あぁぁ? じゃ、この写真は偽物ってわけだ。長い牙なんて無いもん。つまんねーな」

悲しそうな声を上げて雑誌を床に放り出し、ティムの話を詳しく聞きなおしていたスティーブだったが、通路から現れたニックの姿を目にし、話をやめておもむろに立ちあがる。

スティーブ「そーうそう、俺、サカキに用があったんだ。ティム、話はまた後でな」
ティム「えーこれからがおもしろいトコなのに」

すれ違いざま、ニックの肩をポンっと叩いて部屋を出て行くスティーブを、ティムは不満そうに見送り、ミリアナは大きく溜息をつきながらWeekly UMA最新号を拾った。

ミリアナ「やっぱりニックの部屋から無断で持ち出したんじゃない。……困った人……」