作品紹介xxxHOLiC

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まったく見ないヒト・興味のないヒトに比べれば、アニメは見ていたし詳しかったけれど、
アニメ作りをオシゴトにすることは、まったくの「無知との遭遇」だった。

『色彩』についてもそのひとつ。

四月一日と百目鬼がいつもの漫才をしている。シーンは昼間の学校。
で、いっしょに下校する。時間は夕方だろう。そして、夜の百目鬼の寺でふたたび会うシーン。
実写なら、それぞれの時刻に四月一日と百目鬼の役者が芝居をして、カメラを回せばいい。
ところが…アニメではそうはいかない。

たとえば、昼間の肌色と夜の肌色では当然、見た目の色味が違うはず。なので、
『昼間の色(ノーマル色、と呼ばれる)』、『夕景色』、『夜色』とシーンにあわせて
キャラクターの色を変えていかなくてはいけない…恥ずかしい話、ギョーカイに入るまで
こんな当たり前のことに気付かずにアニメを見ていたのだ。

肌、髪、瞳、衣装etc…といったキャラの基本色を決め、シーンごとにその色を変化させる。
それが、『色彩設計』…ヒロセさん(※1)のお仕事である。

xxxHOLiCのセールスポイントのひとつに、毎回新たに描き起こされる侑子サンの衣装がある。
世にアニメは多けれど、主人公が毎回毎回コスチュームを変えてくる作品はめったに
ないんではなかろうか。

デザイン凝りまくり、どうやって洗濯すんだコレと言いたくなる美麗な衣装の数々だが、
実は、キャラクターデザインの段階ではそのカラーリングは決まっていない。
デザイン画は、鉛筆の線だけの、言わば塗り絵のような状態なのだ。

衣装のデザインや質感・登場シーンの色味・ストーリーのテンション、その他もろもろを
考え合わせ、ヒロセさんはキャラの色を決めていく。

しかもあろうことか、カントクチェックの段階で、ヒロセさんは数種類の候補を当然のように
用意している。皆さんが目にする侑子サンの衣装には必ず、幻のカラーリングが存在するのだ。
カントクのOKが出たら、前述のように今度はシーンに合わせた「色変え」が行われる…

季節。時刻。天候。そこは屋外か部屋の中か。光源は日光なのかロウソクの灯なのか。
キャラがそこに〝いる〟ということは、その状況に合った見た目・色味をしている、ということ。

考えれば当たり前のことなんだけれども、もうちょっと考えれば、それがなんの違和感もなく
見えるために必要な作業がいかに大変か、ということもわかるだろう。
そしてその大変な作業が当たり前のようにされて初めて、アニメは映像として成立する。

今夜のxxxHOLiC 第12話「ナツカゲ」のキーワードは、『夏』『花』『海』…
とくればもう、侑子サンやひまわりの衣装はアレしかないですな(笑)
すべてのキャラの、すみずみまで行き渡ったヒロセさんの色使いにも注目して、ぜひお楽しみを。

今回採用した色味
※1 広瀬いづみ Hirose Idumi(色彩設計)
代表作は劇場作品「DEAD LEAVES」の色彩設定、TV「風人物語」の色彩設定、劇場作品「イノセンス」では色指定を担当した。現在放映中のTV「xxxHOLiC」の色彩設定を務め、華やかな色彩で色を演出する。